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社会保険の適用拡大はいつから?106万円の壁撤廃と50人以下の中小企業の準備(2025年改正)

2025年成立の年金制度改正法で、社会保険(厚生年金・健康保険)の適用が大きく拡大します。「106万円の壁」(賃金要件)の撤廃と、企業規模要件(51人以上)の段階的撤廃で、50人以下の中小企業も順次対象に。いつから・どの規模が対象になるのか、保険料の会社負担、扶養内パートの働き方、勤怠・給与クラウドでの対象者判定まで、社労士エンジニアが解説します。

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はじめに

「うちはパートさんが多いけど、51 人もいないから社会保険の適用拡大は関係ない」――そう考えている中小企業の経営者・人事担当者は要注意です。

2025 年 6 月 13 日に成立した年金制度改正法 により、社会保険(厚生年金保険・健康保険)の適用が、これまでとは比べものにならないほど大きく拡大します。ポイントは 2 つ。「106 万円の壁」(賃金要件)の撤廃 と、企業規模要件(被保険者 51 人以上)の段階的な撤廃 です。最終的には、企業の規模や賃金額にかかわらず、週 20 時間以上働き、学生除外・雇用見込みなどの要件を満たす短時間労働者が社会保険の加入対象 になります。

つまり、いま適用拡大の対象外である小規模な事業所も、いずれ確実に対象に入ってきます。保険料の事業主負担が増える話でもあるので、早めに影響を把握しておくことが大切です。本記事では、社労士エンジニアの視点から、何がどう変わるのか、中小企業が今から準備すべきことを整理します。

2026年10月 同時施行カレンダー(無料) — 2026年10月前後は、短時間労働者の賃金要件の撤廃(2026年10月予定)や保険料調整制度の開始のほか、カスハラ対策義務化・同一労働同一賃金の改正(いずれも10月1日施行)、都道府県ごとに順次発効する最低賃金の改定と、労務の対応事項が集中します。「10月の給与計算までに、何をどの順にやるか」だけを時系列に並べたチェックリストをお配りしています。→ 無料でダウンロードする

この記事でわかること

  • 現在の社会保険の加入要件(短時間労働者の 5 要件)のおさらい
  • 「106 万円の壁」(賃金要件)が撤廃されるとどうなるか
  • 企業規模要件(51 人以上)が段階的に撤廃されるスケジュール
  • 中小企業への影響(保険料負担・扶養内パートの働き方)
  • 勤怠・給与クラウドで加入対象者を自動で見える化するヒント

現在の加入要件(短時間労働者の主な要件)

まず、いまの仕組みを整理します。パート・アルバイトなどの短時間労働者が社会保険に加入するかどうかは、主に次の要件で判断します(下記すべてを満たす場合に加入対象)。

要件 内容
① 労働時間 週の所定労働時間が 20 時間以上
② 賃金 月額賃金 8.8 万円以上(年収約 106 万円。いわゆる「106 万円の壁」)
③ 雇用見込み 2 か月を超える 雇用の見込みがある
④ 学生 学生でない(一部例外あり)
⑤ 企業規模 勤務先の 被保険者数が 51 人以上

今回の改正は、このうち ②賃金要件⑤企業規模要件 にメスを入れるものです。

変更点1:「106万円の壁」(賃金要件)の撤廃

改正により、②の賃金要件(月 8.8 万円以上)が撤廃 されます。これがいわゆる「106 万円の壁」の撤廃です。

撤廃の時期は、最低賃金の全国加重平均が 1,016 円以上になることを見極めたうえで、公布から 3 年以内の政令で定める日 とされています。最低賃金の上昇により月 8.8 万円という基準の意味が薄れてきたことが背景にあり、日本年金機構は 2026 年(令和 8 年)10 月の撤廃を予定 として案内しています。ただし 正式な施行日は政令で定まる ため、最新情報の確認が必要です。

賃金要件が撤廃されると、企業規模要件・学生除外などの 他の要件を満たす場合、月額 8.8 万円未満であっても加入対象になり得ます。「あえて月 8.8 万円未満に抑えて社保を避ける」という働き方の調整は、今後通用しにくくなっていきます。

変更点2:企業規模要件の段階的撤廃

もう一つの大きな変更が、⑤企業規模要件(被保険者 51 人以上)の段階的な撤廃 です。中小企業にとってはこちらの影響が大きい論点です。

時期 企業規模要件の基準(厚生年金保険の被保険者数)
現行 51 人以上
2027 年 10 月 36 人以上
2029 年 10 月 21 人以上
2032 年 10 月 11 人以上
2035 年 10 月 10 人以下も対象(企業規模要件を撤廃)

このように、4 段階で基準を引き下げていき、最終的に 2035 年 10 月には企業規模要件そのものがなくなります。

あわせて、2029 年 10 月 から、常時 5 人以上を使用する個人事業所は 原則として業種を問わず適用対象 になります。ただし、施行時に既に存在する非適用業種の個人事業所には、当分の間適用しない経過措置があるため、個人事業所については自社が対象になるか個別の確認が必要です。

要するに、「うちは小さいから関係ない」という状態は時限的 です。最終的には、企業規模にかかわらず、週 20 時間以上働く短時間労働者は、学生除外など一定の要件に該当しない限り社会保険の加入対象になる、と理解しておくのが安全です。

【2026年8月25日追記】新たに適用対象となる事業所向けの「保険料調整制度」が2026年10月から始まります

適用拡大に関連して、従業員50人以下の事業主向けの新しい支援制度 が2026年10月1日に始まるため、追記します(出典:日本年金機構「保険料調整制度」特設ページ・同チラシ)。

保険料調整制度 は、新たに社会保険の加入対象となる短時間労働者が就業調整をせずに働けるよう、対象従業員の社会保険料(従業員負担分)を、制度の利用から通算3年間軽減する 制度です。ポイントを整理します。

  • 対象となる事業所 — ① 2026年10月1日以降に、労使合意により「任意特定適用事業所」となった事業所(⚠️ 2026年9月30日以前にすでに任意特定適用事業所となっている場合は対象外)、② 2027年10月以降、企業規模要件の段階的な引き下げにより短時間労働者が新たに加入対象となる事業所。50人以下であれば自動的に対象になる制度ではありません
  • 対象となる従業員 — 次の3つをすべて満たす短時間労働者:週の所定労働時間が20時間以上(フルタイムの4分の3未満)/月収13万円未満(標準報酬月額12.6万円以下)/学生でない
  • 軽減の中身 — 従業員負担の一部を事業主が追加負担する形で、従業員は少ない負担で社会保険に加入できます。軽減割合は月収に応じて異なり、3年目は軽減割合が半減 します。事業主が追加負担した分は、一定期間経過後に支払う保険料から全額控除されるため、最終的な事業主負担は増えません従業員が将来受け取る年金額にも影響しません
  • 手続き「保険料調整開始申出書」の提出が必要 です。期限は 事業所が制度の対象となった日から2年以内、提出は事務センターへの郵送または管轄の年金事務所へ郵送・窓口持参(電子申請は不可。健康保険組合に加入している場合は各組合に確認)。様式・最新情報は上記の特設ページで確認してください

「106万円の壁の撤廃で加入対象が増える。でも本人の手取りが減るのが心配」という会社にとって、現時点で企業規模要件を満たさない事業所では、労使合意による任意特定適用事業所への移行と、保険料調整制度の利用を併せて検討できる ようになった、というのがこの制度の意味です。給与計算の実務では、従業員から控除する軽減後の社会保険料額を正しく設定し、給与ソフトが制度に対応しているかの確認も忘れずに。

50人以下の会社はいつから対象になる?

「結局、うちはいつから対象なの?」が、いちばん気になるところだと思います。以下は、厚生年金保険の被保険者数 を基準にした大まかな目安です。

  • 36〜50 人程度 の会社 → 2027 年 10 月 から短時間労働者の適用拡大の対象になり得る
  • 21〜35 人程度 の会社 → 2029 年 10 月 が目安
  • 11〜20 人程度 の会社 → 2032 年 10 月 が目安
  • 10 人以下 の会社 → 2035 年 10 月 が目安

ここで注意したいのは、判定の基準が「従業員数」そのものではなく、原則として 厚生年金保険の被保険者数 である点です。パート・アルバイトを多く抱える会社では、正社員の人数だけで「対象外」と判断せず、被保険者数で確認することが大切です。

中小企業への影響

適用拡大が進むと、中小企業には主に 2 つの影響があります。

1. 社会保険料の事業主負担が増える

社会保険料は 労使折半 です。新たに加入対象となるパート・アルバイトが増えれば、その分 会社負担の保険料が増加 します。人件費に直結するため、対象者が何人増え、負担がいくら増えるかを早めに試算しておくことが重要です。

2. 「扶養内」で働くパートの働き方が変わる

配偶者の扶養に入って「106 万円・130 万円の壁」を意識して働いてきたパートの方にとって、賃金要件の撤廃はインパクトがあります。手取りを気にして就業調整していた人が、働き方を見直すきっかけ になります。会社としては、加入によって将来の年金が増える・傷病手当金などの保障が手厚くなるといった メリットも丁寧に説明 し、シフトや時給の設計を一緒に考える姿勢が、人材の定着につながります。

なお、社会保険の適用拡大に伴う事業主の負担軽減やパートの手取り対策については、国の支援策(助成金等)が用意されてきた経緯があります。利用できる制度や要件は時期によって変わるため、最新の取り扱いは厚労省や社労士に確認することをおすすめします。

勤怠・給与クラウドで「対象者」を見える化する

ここからは、社労士エンジニアとしての視点です。適用拡大対応でいちばん面倒なのが、「誰が加入対象になるのか」を正確に把握し続けること です。週の所定労働時間、月額賃金、雇用見込みといった条件は人によって異なり、雇用契約上の所定労働時間やシフトの組み方が変われば、加入対象者も変わる可能性があります。これを紙や手作業の Excel で管理すると、加入漏れ・手続き遅れのリスクが高まります。

ここは 勤怠管理と給与計算のクラウド を連携させて、仕組みで回すのがおすすめです。

  • 雇用契約・シフト予定から「週所定 20 時間以上」を自動判定 — 実労働時間だけでなく、契約上の所定労働時間を基準に対象者を把握(社会保険の判定は原則として所定労働時間で見る)
  • 勤怠実績とのズレをアラート表示 — 契約上は 20 時間未満でも、実態として恒常的に 20 時間以上働いていないかを確認
  • 給与データと突合して保険料負担を試算 — 対象者ごとの報酬見込み(標準報酬月額)をもとに、会社負担額を早めに把握
  • 被保険者数のカウント — 企業規模要件の基準(36 人、将来の引き下げ)に近づいたら気づける

こうした「条件に合う人を機械的に拾う」処理は、IT がもっとも得意とするところです。年金事務所への手続きまで含めてクラウドで一気通貫にしておくと、段階的な制度変更にも慌てずに対応できます。

給与計算のクラウド化の考え方は 中小企業がいま給与計算をクラウド化すべき3つの理由、労務全般の DX の進め方は 労務をDXする最初の一歩 でも解説しています。適用拡大対応は、この「データを一元化して条件で自動判定する」発想と相性が良い領域です。

今からやるべき準備チェックリスト

施行は段階的ですが、今から着手できることを整理します。

  • 現在のパート・アルバイトの 週所定労働時間と月額賃金 を一覧化する
  • 賃金要件・企業規模要件の撤廃で 新たに対象となる人数 を見積もる
  • 増える 社会保険料(会社負担分)を試算 し、人件費計画に織り込む
  • 対象になりそうなパートと 働き方(シフト・時給)について早めに対話 する
  • 勤怠・給与の クラウド化/連携 を検討し、対象者の自動判定の仕組みを作る
  • 利用できる 支援制度(助成金等)の最新情報 を確認する

まとめ

  • 2025 年成立の年金制度改正法で、社会保険の適用が大きく拡大します。
  • 「106 万円の壁」(賃金要件)が撤廃 されます(日本年金機構は 2026 年 10 月の撤廃を予定として案内。正式な施行日は政令で確認)。
  • 企業規模要件(51 人以上)は 2027 年 10 月に 36 人以上、2029 年 10 月に 21 人以上、2032 年 10 月に 11 人以上へと引き下げられ、2035 年 10 月に撤廃 される方向です。
  • 中小企業は 保険料の会社負担増扶養内パートの働き方の変化 に備える必要があります。
  • 従業員50人以下の事業所を中心に、新たに加入する一定の短時間労働者の保険料負担を通算3年間軽減する 保険料調整制度 が2026年10月1日に始まります。対象は、同日以降に任意特定適用事業所となる事業所のほか、2027年10月以降の適用拡大で新たに対象となる事業所です(50人以下なら自動的に利用できるわけではなく、申出書の提出が必要です)。
  • 「誰が対象か」を 勤怠・給与クラウドで自動判定 できる仕組みにしておくと、段階的な制度変更にも慌てず対応できます。

「うちは小さいから関係ない」が通用しなくなるのが、今回の適用拡大です。いつ・誰が・いくら対象になるのかを早めに把握し、人件費計画とパートの働き方を一緒に設計しておきましょう。

当事務所では、社会保険の適用拡大に向けて、次のような支援が可能です。

  • パート・アルバイトの 加入対象者チェック
  • 企業規模要件に 該当する時期の確認
  • 社会保険料の 会社負担額の試算
  • 扶養内パートへの説明資料 作成
  • 勤怠・給与クラウドを使った 対象者管理の仕組み化

「うちの会社はいつから対象になるのか知りたい」という段階でも構いません。初回相談は無料です。お気軽にお問い合わせください。


参考リンク

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