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フリーランス新法対応の3条書面テンプレート|業務委託の類型別・記載例つきで解説

フリーランス新法の3条書面に必要な8項目と、成果物型・時間単価型・継続契約型の記載例を社労士エンジニアが解説。2026年10月更新:公取委の広報強化期間(10/8〜11/30)、2026年1月の振込手数料ルール、12月施行の改正公益通報者保護法、違反の多い類型とよくある抜け3つを反映。

#フリーランス新法#業務委託#3条書面#中小企業

はじめに

「フリーランスに発注するたびに契約書を作るのは現実的ではない」――顧問先からよくいただくお悩みです。

フリーランス新法で中小企業の発注者が対応すべきことでも触れたとおり、業務委託の発注時には、法 3 条に基づく 取引条件の明示(3 条書面) が必要です。これは委託期間の長短にかかわらず、フリーランスへの業務委託すべてに適用される、いわば「入口の義務」です。

ただし、法律は「紙の契約書を毎回作れ」とは言っていません。メール・チャットなどの電磁的方法でも可であり、テンプレート化さえできれば、発注ごとの作業は数分で済みます。

本記事では、3 条書面に必要な 8 項目をテンプレート化し、業務委託の代表的な 3 類型(成果物型/時間単価型/継続契約型)について そのままコピーして使える記載例 を紹介します。

この記事でわかること

  • 3 条書面と業務委託契約書の違い
  • 3 条書面に必須となる 8 項目の基本的な書き方
  • 成果物型・時間単価型・継続契約型ごとの具体的な記載例
  • 電子メール・チャットで交付する場合の運用ルール
  • 業務内容や報酬が事前に確定しない場合の対処
  • 発注フローを IT で省力化するヒント
  • 【2026 年 10 月更新】広報強化期間・2026 年 1 月以降の変更点・12 月施行の改正公益通報者保護法

【2026 年 10 月更新】公取委の広報強化期間(10/8〜11/30)と施行 2 年

フリーランス新法(フリーランス・事業者間取引適正化等法)は 2024 年 11 月 1 日の施行から、2026 年 11 月 1 日で丸 2 年になります。公正取引委員会は 2026 年 10 月 8 日〜11 月 30 日を「フリーランス法の広報強化期間」 と定め、「秘密結社 鷹の爪」とタイアップした特設サイト(キャッチコピーは「言った言わないなくしてこ!」)を公開しました。発注側が自社の取引を点検できる 「うっかりチェック」、理解度診断、注文書テンプレート(Excel)が置かれています。

「言った言わない」をなくす道具が、まさに 3 条書面です。施行からまもなく 2 年を迎え、公取委の勧告・指導の実績も公表されています(次節)。この機会に、自社の発注フローを一度点検してみてください。

→ 公取委「フリーランス法特設サイト 2026」うっかりチェック

運用状況:違反の 4 割は「取引条件の明示」

公正取引委員会が 2026 年 6 月に公表した令和 7 年度の運用状況によると、勧告 10 件・指導 1,542 件。違反行為の類型別件数(合計 2,727 件)では、次の 2 つで 82.9% を占めています。

違反行為の類型 件数 割合
期日における報酬の支払義務違反(4 条) 1,135 件 41.6%
取引条件の明示義務違反(3 条) 1,126 件 41.3%
買いたたき 250 件 9.2%

業種別では情報通信業が最多(575 件・37.0%)です。2026 年 6 月 11 日には KADOKAWA が、原稿作成等を委託したフリーランス 113 名に取引条件を直ちに明示せず、支払期日も定めていなかったとして勧告を受けました(3 条 1 項・4 条 5 項違反)。

支払期日を 3 条書面に書くことと、その期日どおりに支払う管理はセットです。明示違反と支払期日違反が上位 2 つを占めている以上、支払期日まで含めて書面化する「まず 3 条から」が、最も効率のよい対策です。

3 条書面は契約書と何が違う?

ここで先に整理しておきたいのが、3 条書面は業務委託契約書そのものではないということです。

3 条書面は、発注時に 取引条件を明示するための通知 です。そのため、必ずしも「契約書」という名称である必要はなく、必要な事項が記載されていれば、発注書・注文書・メール本文・PDF などの形でも対応できます。「契約」というより「条件のお知らせ」に近いイメージです。

一方、業務委託契約書は、より広い民事上の合意事項――秘密保持、著作権の帰属、損害賠償、再委託の可否、契約解除の条件など――を整理する文書です。3 条書面だけでは、これらの論点はカバーされません(逆に、必要事項を満たした契約書を発注時に交付すれば、契約書が 3 条書面を兼ねることはできます)。

実務上のおすすめは、

  • 発注ごとに 3 条書面(メール本文または PDF)を交付
  • 基本契約として業務委託契約書(または基本取引契約書)を別途締結

の二段構えにすることです。基本契約で共通ルールを定めておけば、案件ごとの 3 条書面は最小限の内容で済み、運用負担も下がります。

3 条書面に必須の 8 項目(おさらい)

法 3 条 1 項および公正取引委員会規則により、発注者がフリーランスに業務委託を行うときは、次の事項を書面または電磁的方法で明示する必要があります(規則の明示事項を実務用に 8 項目へ整理したものです)。

  1. 発注事業者・フリーランスの名称
  2. 業務委託をした日
  3. 業務の内容(給付の内容)
  4. 給付を受領する日/役務提供を受ける期日
  5. 給付を受領する場所/役務提供を受ける場所
  6. 検査をする場合は、その検査を完了する期日
  7. 報酬の額および支払期日
  8. 現金以外の方法で報酬を支払う場合は、その支払方法

正当な理由により「事前に確定できない事項」がある場合は、その旨と確定しない理由・確定する予定期日を明示し、確定後すみやかに追加の書面・通知を交付する運用が認められています(公正取引委員会ガイドライン)。

共通テンプレート(コピーして使える)

まずは、業務委託の類型を問わず使える共通テンプレートです。メール本文や PDF にそのまま落とし込めます。

件名:業務委託に関する取引条件のご通知(フリーランス新法 3 条書面)

──────────────────────────────────
■ 発注者
 会社名:株式会社●●
 所在地:東京都●●区●●
 担当者:●●部 ●●

■ 受託者(フリーランス)
 氏名/屋号:●● ●●(●●デザイン)

■ 業務委託日
 2026 年●月●日

■ 業務内容(給付の内容)
 ●●●●(具体的な仕様・分量・成果物の形式を記載)

■ 給付を受領する日/役務提供期日
 2026 年●月●日 ●●時まで

■ 給付を受領する場所/役務提供場所
 メールにて納品(●●@●●.co.jp 宛)

■ 検査の完了期日
 納品日から 7 営業日以内

■ 報酬の額
 金●●,●●●円(消費税込/源泉所得税の取扱い:別途記載)

■ 支払期日
 受領月の翌月 20 日(受領日から起算して 60 日以内)

■ 支払方法
 銀行振込(振込手数料は発注者負担)
──────────────────────────────────

このフォーマットを発注のたびにコピーし、業務内容と日付・金額だけ差し替える運用なら、1 案件あたりの作業は数分の差し替えで済みます。

⚠️ 支払期日の起算点に注意 フリーランス新法では、支払期日は 「給付を受領した日」から起算して 60 日以内のできる限り短い期間 で定める必要があります(検収完了日ではありません)。本記事の記載例が「受領月の翌月 20 日」としているのはこのためで、「検収完了月の翌月末日」のような検収起算にすると、検収が月をまたいだ時点で受領日から 60 日を超えるケースが出ます。月末締めの慣行で運用している場合は、起算点を受領日に直してください。

📝 テンプレート利用にあたって 本記事の記載例は一般的なひな形です。実際の取引内容・業種・契約条件に応じて調整したうえでご利用ください。

類型別の記載例

業務委託にはさまざまな形態がありますが、実務上よく見るのは次の 3 類型です。

類型 1:成果物型(デザイン・ライティング・撮影など)

成果物が明確にあり、納品をもって完了する取引です。

項目 記載例
業務内容 コーポレートサイト用バナー画像 5 点(PC 用 1200×400px、SP 用 750×400px)の制作。Adobe Illustrator 形式(.ai)および書き出し済み PNG で納品
受領日 2026 年 11 月 10 日 18:00 まで
受領場所 Google Drive 共有フォルダ(URL:●●●)
検査完了期日 納品から 5 営業日以内
報酬の額 1 点 22,000 円(税込)× 5 点=110,000 円(税込)
支払期日 受領月の翌月 20 日

記載のポイント

  • 仕様(サイズ・解像度・ファイル形式)まで含めて書く。曖昧だと「やり直し」を巡るトラブルになりやすい。
  • 修正回数の上限を業務内容に書き込んでおくと、無償の追加対応リスクを下げられる。

類型 2:時間単価型(エンジニアの工数チャージ・コンサル時間契約など)

成果物ではなく、役務提供時間に対して報酬を支払う取引です。

項目 記載例
業務内容 自社業務システム(kintone)のカスタマイズ支援。要件定義・実装・テストを稼働時間に応じて支援
役務提供期日 2026 年 11 月 1 日〜11 月 30 日
役務提供場所 リモート(Slack・Google Meet を主に使用)
検査完了期日 月末稼働時間報告書の提出後 5 営業日以内に検収
報酬の額 時間単価 8,000 円(税込)/月間上限 40 時間
支払期日 役務提供月の翌月 20 日

記載のポイント

  • 単価のほか「上限工数」を書いておく。書かないと請求トラブルの原因になりやすい。
  • 稼働報告の方法(Toggl・Slack 投稿・スプレッドシートなど)を業務内容に明記しておくと、検収プロセスがスムーズ。

類型 3:継続契約型(月額顧問・継続コンサル・月次運用支援など)

月額固定または毎月一定のサービスを継続提供する取引です。6 か月以上継続する見込みがある場合は、配慮義務・解除予告義務(親記事の実務ポイント 5)の対象にもなるため、最初から長期前提の条項を入れておくと安全です。

項目 記載例
業務内容 SNS 運用支援(X/Instagram)。月 8 本の投稿企画案、画像制作、投稿代行、月次レポート(1 回/月)
役務提供期日 2026 年 11 月 1 日〜(1 か月単位で自動更新、終期は別途定める)
役務提供場所 リモート(オンラインミーティングは月 1 回)
検査完了期日 毎月の月次レポート提出から 5 営業日以内
報酬の額 月額 88,000 円(税込)
支払期日 当月分について翌月末日

記載のポイント

  • 「自動更新」の場合でも、中途解除や不更新は 30 日前までの予告が必要(6 か月以上の業務委託に該当する場合)。
  • 月次の業務量に増減がある場合は、上限・下限のレンジを明記しておく。
  • 月額契約でも、支払期日は 各月の役務提供を受けた日から 60 日以内 に収まるよう設定する。「当月分・翌月末日」が一般的だが、起算点はあくまで受領日。

記載でつまずきやすい論点

業務内容が事前に確定しない場合

リサーチ業務や開発要件のように、発注時点で業務内容を細かく書ききれない取引があります。この場合は、

  • 「現時点で確定している部分」を 3 条書面で交付
  • 確定していない事項について、確定しない理由と確定予定日を明示
  • 確定したら、追加の書面・通知をすみやかに交付

という運用が公正取引委員会のガイドラインで認められています。「決まっていないから書面は後で」は許容されません。最初に交付しておくのが鉄則です。

検査の運用

「検査をする場合」と条文にあるとおり、検査自体は必須ではありません。ただし、検査を行う取引であれば検査完了期日の記載が必要です。

検査を行わない取引 であっても、報酬支払期日は 受領日から 60 日以内 に設定する必要があります。「検査が長引いて支払いが遅れた」は通用しません。

電磁的方法で交付するときの注意

公正取引委員会の解説でも、3 条書面はメールや SNS メッセージなどの電磁的方法で交付してよく、決まった様式もない(箇条書きのメール本文でも可)とされています。形式の制約は緩やかで、運用しやすい方法を選べます。ただし、電磁的方法で明示した後にフリーランスから書面の交付を求められたときは、法令上の例外を除き、遅滞なく書面を交付する必要があります(法 3 条 2 項)。

ただし実務上は、フリーランスが内容を確認でき、後から参照できる形で残しておくことが重要です。PDF やメール本文のように保存・検索しやすい形式にし、案件 ID・日付・件名のルールを統一しておくと、紛争時の証跡としても役立ちます。

よくある抜け 3 つ

勧告事例や顧問先の点検で繰り返し出てくる「抜け」は次の 3 つです。

よくある抜け 何が問題か 直し方
口頭・電話だけで発注している 3 条は「業務委託をしたら直ちに」書面か電磁的方法で明示する義務。言った言わないの典型 チャットでも可。発注の瞬間に共通テンプレートを送る
報酬額を「後で決める」まま走り出す 未定事項が認められるのは正当な理由で確定できない場合に限られ、その理由と確定予定期日の明示が必要 「●●のため未定・●月●日までに確定」と書き、確定後に追加通知
支払期日を書いていない/「検収後」としか書いていない 支払期日を定めなければ受領日が支払期日とみなされる。検収起算は 60 日超過の原因 受領日から 60 日以内に収まる具体的な期日を書く

2026 年 1 月 1 日以降の取引で変わった点

取適法(旧下請法)改正の施行に合わせ、フリーランス新法の解釈ガイドライン(「考え方」)と公取委の施行規則も 2026 年 1 月 1 日付で改正されています。3 条書面の運用に関わるのは次の 3 点です。

  1. 振込手数料の天引きは、合意があっても「報酬の減額」に該当。2025 年 12 月 31 日以前の業務委託では、事前に書面等で合意していれば実費の範囲で差し引けましたが、2026 年 1 月 1 日以降に業務委託する取引では合意の有無にかかわらず減額扱い です(報酬減額の禁止は、1 か月以上の業務委託が対象)。3 条書面の支払方法欄は、本テンプレートのとおり「振込手数料は発注者負担」としてください。
  2. 明示事項そのものは変わっていません。施行規則の改正は未定事項の規定を 1 条に移す条文整理が中心で、本記事の 8 項目はそのまま使えます。
  3. 取適法とフリーランス新法の両方が適用される取引は、両法の記載事項を 1 通にまとめて明示できます(フリーランスガイドライン 2026 年 1 月 1 日改定)。どちらの法律が掛かるかは取適法との違いの記事で確認できます。

12 月 1 日から:公益通報者保護法の保護対象にフリーランスが加わる

2025 年に成立した改正公益通報者保護法(令和 7 年法律第 62 号)が 2026 年 12 月 1 日に施行 されます。発注者と業務委託関係にあるフリーランス(定義はフリーランス新法 2 条を引用)と、業務委託終了後 1 年以内のフリーランス が公益通報者に加わり、公益通報を理由とする業務委託契約の解除その他の不利益な取扱いが禁止 されます。正当な理由のない通報妨害や通報者の探索も禁止です。

発注側が 11 月中に備えておきたいのは次の 2 点です。

  • 通報窓口の周知先にフリーランスを含める。改正後の指針では、労働者と同様にフリーランスにも受付窓口を周知することとされています(常時使用する労働者 300 人超は体制整備が義務、300 人以下は努力義務)。
  • 契約解除・不更新の理由を記録に残す。12 月以降は「通報した直後の契約解除」が不利益な取扱いとして争点になり得ます。6 か月以上の継続的業務委託で求められる解除予告・理由開示とあわせ、理由を書面で説明できる運用にしておきましょう。

IT に強い社労士のヒント:発注フローの省力化

3 条書面の運用は、フォーマット化次第で十分省力化できます。実際に顧問先で導入している仕組みをいくつか紹介します。

  • Google Forms + Apps Script — 8 項目を入力するとフォーム送信時に PDF を自動生成、フリーランス宛にメール送付。社内には発注台帳としてスプレッドシートに自動追記。
  • kintone のアプリ化 — 「フリーランス発注管理」アプリを作り、ステータス(発注済/納品済/検収済/支払済)を一元管理。継続月数の自動計算で 6 か月超過のフリーランスを自動通知。
  • 電子契約サービスの活用 — クラウドサインや GMO サインで、業務委託契約書・発注書・3 条書面を一元管理。送付履歴や確認履歴をログとして残せる。

「テンプレート+発注フォーム+電子契約」の 3 点セットを用意すると、3 条書面の作成と送付は定型作業にでき、記載漏れも起きにくくなります。

まとめ:明日からやる 3 つのアクション

  1. 共通テンプレートを 1 枚作り、社内の発注担当者全員と共有する
  2. 発注している業務委託を 3 類型(成果物型/時間単価型/継続契約型)に分類し、類型ごとの記載例を整える
  3. メール・チャット発注の運用ルール(案件 ID・件名フォーマット)を統一する

3 条書面は「契約書」ではなく「取引条件の明示」です。重く考えず、フォーマット化して運用に組み込むことが、結果的に自社をトラブルから守ります。

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参考リンク

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